ユスリカってどんな虫?
ユスリカ(揺蚊)とは
ハエ目(双翅目)・糸角亜目・ユスリカ科(Chironomidae)に属する昆虫の総称です。
和名は幼虫が体を揺するように動かすことに由来すると言われています。
大部分の種類は幼虫が水生で、川、池などの、ほとんどあらゆる淡水域に棲んでいるものです。
他には海の潮間帯※に棲むものや陸生のもの、水辺の朽木(くちき)の中や土壌中などに棲む半水生的なものなども少数ああります。
中には水生昆虫や貝類に寄生するような特殊なものも知られています。
高潮線と低潮線の間のこと
ユスリカの成虫は小さくて、体長は0.5mmから1cm程度しかありません。
メスの触角は普通ですが、オスの触覚は全方位に生えた多数の横枝があって、ブラシ状になっています。
蚊(か)の触覚よりも短めでふさふさに見えます。
メスグロユスリカなどの、雌雄で体の色が異なる種類も存在します。
釣り餌や観賞用高級金魚の生餌に使われるアカムシは、オオユスリカやアカムシユスリカなどの幼虫です。
幼虫はその体の色からアカムシ、またはアカボウフラと呼ばれています。
ボウフラ(蚊の幼虫)とは形状が大幅に異なっています。
通常は、細長い円筒形で、本来の付属肢はありません。
頭は楕円形で、眼、触角、左右に開く大きな顎(あご)や、そのほか多くの付属器官があって、これらの微細な形態が幼虫の分類に使われています。
口のすぐ後ろには前擬脚と呼ぶ1つの突起があり、その先端には多くの細かい爪があって付属肢の様に利用する。
腹部末端にも1対の脚があり、やはり先端に爪があり体を固定したりするのに役に立っています。
また通常、体の後端には数対の肛門鰓(こうもんさい)をもっていて、ユスリカChironomus など、一部のグループには腹部にも血管鰓(けっかんさい)※を有するものもある。
水中の酸素を摂取するための皮膚が変化したえらで、体壁の一部が突出したもの。
その下に流れる体液(血液)と水中の酸素が薄い体壁を通してガス交換をするもの。
ユスリカと蚊(か)の違いってなに?
ユスリカの成虫は蚊(か)によく似た大きさや姿をしていますが、刺すことはありありません。
また蚊(カ)のような鱗粉(りんぷん)も持っていないので、蚊(カ)と見誤って叩いても、黒っぽい粉のようなものが肌に付くことはあません。
しばしば、川や池の近くで蚊柱(かばしら)をつくります。
アフリカのマラウィにあるマラウィ湖での蚊柱(かばしら)は数十mの高さになることで知られています。
非常に種類が多くて、世界から約15,000種、日本からは約2,000種ほどが確認されています。
蚊(か)とユスリカは、パッと見分けがつきづらく、蚊の中でも特にアカイエカとは見た目がそっくりです。
名前にアカが入っていますが、体の色は茶褐色や灰褐色です。
種類によって多少異なるのですが、ユスリカも似たような色をしています。
そんな2種類の虫の最大の違いは、血を吸うか吸わないかということです。
蚊(か)の雌が主に産卵期に吸血するのに対し、ユスリカの成虫は雄も雌も血を吸いません。
それどころか、口器が退化しているので、ほとんどの種類のユスリカはエサを食べられず、わずか数日で命を落としてしまうのです。
ハエ目のユスリカ科に属するユスリカは、ハエ目のカ科に属する蚊(か)とは全く異なる別の虫ということになります。
よく観察すれば、とまり方でも見分けることができます。
- 後脚が長く、これを上にあげて静止するのがアカイエカ。
- 前脚が長く、これを前に伸ばして静止するのがユスリカです。
また、街路灯や室内の照明にたかっていたら、光に集まる習性があるユスリカの可能性が高いです。
ユスリカはどんなところで発生する?
ユスリカの主な生息地は湖や河川の近くです。
特に生活排水などで汚れたどぶ川では大量発生することもあります。
ドブの泥を集めて棲管を作り、そこから上半身をのりだして、ゆらゆらしている様子がよく見られます。。
ただし、種の数からすればドブにすむものはごく一部で、富栄養化の進んでいない普通の川や池沼、あるいは清流にすむものも多いです。
この他、公園や学校、飲食店の前や一般家庭の玄関先など色々な場所で見られます。
富栄養化した水域で特に多く発生するとは言っても、川などが完全に汚れて、有害物質がいっぱいになると、逆に発生しなくなります。
つまり、都会の川では、下水道の整備などで川の浄化がある程度進んだ時点で、大発生することもあるのです。
川にユスリカがいるのは普通のことなので、まったくいないもしくは大量発生するといったことで、川の汚染の状態を計る
自然のバロメーターともいえます。
すなわち、指標生物として使えるのです。
しかし幼虫によるユスリカの種の判定は、例外を除けば極めて困難で、実際には属レベルまでの同定でも、口器その他の微細な器官の形態を調べなければならず、それなりの熟練が必要です。
大ざっぱな見方としては、赤いユスリカ幼虫の生息する環境は富栄養で汚染がすすんだ場所と見ていいと思われます。
赤い色素は、ヘモグロビンの様に酸素を蓄えるものなので、そのようなユスリカの生息地は、有機物分解がさかんで、酸素欠乏状態になりやすい場所だと見られます。
渓流生のユスリカ幼虫は、緑や茶色で、赤くないものが多いです。
ウミユスリカ類の幼虫は潮間帯やサンゴ礁に棲んでします。
また
- 渓流の落ち葉に潜り込むもの
- 岩の上に棲管を張り付かせるもの
- わずかに水が流れる岩の上に棲むもの土壌中に棲むもの
その他特殊な生息場をもつものも知られています。
周囲の泥や砂をつづって巣を作るものもあり、ナガレユスリカ属のように巣の入り口に特殊な縁飾りを作るものなどもあります。
デトリタスを食べるものが多いと考えられていますが、モンユスリカ亜科のように肉食のものや、他の水生昆虫に寄生するものなどもあります。
蛹(さなぎ)はオニボウフラ(蚊さなぎ)を細長くしたような姿で、水面に泳ぎ上がって、水面で羽化します。
成虫の発生時期は初夏から秋の終わり頃までです。
夕暮れ時などに、小さな虫の大群蚊柱を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
頭の上にできた蚊柱から逃げようと人が移動しても、ユスリカの蚊柱はそれについてきます。
この現象から頭虫(あたまむし)や脳食い虫などと、呼ばれる場合があります。
また同様の理由で虫などが苦手な人からは不快害虫として扱われやすい要因となっています。
そもそも蚊柱(かばしら)ができるのは、なぜ?
蚊柱は数十~数百匹ものユスリカで構成されていますが、そのほとんどは雄(オス)のみであることをご存知ですか?
雌(メス)はいたとしても1匹から多くても数匹しかいません。
1匹では些細な羽音も、数百集まれば結構な音のボリュームになります。
雄は集まってそれぞれ羽音を鳴らして、基本的に単独行動する傾向にある雌を呼び寄せるために、自分たちの存在をアピールしているのです。
そう、ユスリカにとって蚊柱は大切な出逢いの場なのです。
繁殖期になると雌はたった1匹で蚊柱の中に飛び込んで、相手を見つけて交尾し、産卵します。
蚊柱を見つけさえすれば、ユスリカの雌は圧倒的に有利な状況で、運命の相手と結ばれるというワケです。
ユスリカは通常、卵塊(らんかい)と呼ばれるかたまりの状態で水中に産み落とします。
その形は、球状だったり紐状だったり様々です。
また、種類によって卵数も異なります。
例えば、セスジユスリカが一度に産むのは500個程度、オオユスリカは約2,000個にも及ぶと言われています。
他のハエ目と同様に卵から幼虫となり、蛹(サナギ)を経て成虫になります。
ちなみに蛹の期間は、数時間から数日程度です。
その後、成虫になってもわずか数日しか生きられません。
うっとうしく感じる蚊柱ですが、儚い命を繋ぐために奮闘するユスリカの雄の集合体と思うと、少し不快感が和らぐ方もいるのではないでしょうか。
しかし、残念ながら、無害と言い切れない一面もユスリカは持っています。
ユスリカって害虫なの?
蚊(か)のように人間の肌を刺して、血を吸うことはないものの、人間にとって害がないとは言いきれません。
水に棲む幼虫が、生活排水による川の汚れなどによって、川の富栄養化が進むと大量発生して害となります。
川のそばを歩くのも困難なほど大量発生すると、川の近隣住宅においては
- 洗濯物を干せない
- 窓を開けられない
といった問題が起きてきます。
また、洗濯物について潰れてしまうと黄色い体液が付着して汚れの原因にもなる迷惑な虫です。
ときには工場の異物混入の原因になったり、アレルゲンとなる死骸やその粉末を吸入してしまった場合には、ユスリカ喘息を引き起こす危険性があったりもします。
大量発生したユスリカが交尾産卵して死滅した後、死骸が風化する過程の微細な粒子が、空気中に浮遊したり家屋内に堆積して、それらを人が吸引することで起こると考えられています。
小型のユスリカでは、成体が直接眼や口に飛び込むことで炎症を起こす可能性もあります。
こうしたユスリカの大量発生による問題は、全国各地の川や、池のある公園、湖沼などでも起きていて、発生場所を有する各自治体などではその対策に悩まされています。
近年、琵琶湖の周辺に大量発生して問題になるびわこ虫の正体も、実はユスリカ類なのです。
体長1cmを超えるオオユスリカが大繁殖して度々ニュースでも取り上げられます。
年によって、大量発生したり通年に比べてそれほどでもなかったり、発生量には程度の差が生じますが、もはや風物詩化しているといっても過言ではないでしょう。
大量発生の要因の1つとして考えられるのが、湖や河など水域の肥料分の濃度上昇に伴う、プランクトンの増殖です。
それによって生態系がバランスを崩してしまい、ユスリカの繁殖にも影響を与えることがあるようです。
ユスリカは人間の役に立っている?
ユスリカの幼虫は、釣り好きには身近な、あの赤い虫です。
頭虫や脳食い虫、びわこ虫といった別名を持つユスリカですが、幼虫のときは赤虫(アカムシ)またはアカボウフラと呼ばれる種類もいます。
ちなみに幼虫の体色が赤いのは、人の血液中にも含まれるヘモグロビンを持っているためです。
オオユスリカやアカムシユスリカなどの赤い幼虫は魚類のエサとして多く使われるので、釣り好きの方や熱帯魚を飼っている方にとっては、身近な存在ではないでしょうか。
乾燥アカムシや冷凍アカムシとして商品化され、釣りエサや熱帯魚などの観賞魚のエサとして販売されています。
ユスリカの幼虫や蛹をエサにしている魚種は幅広く、飼料として貢献する役割も果たしています。
アフリカのヴィクトリア湖沿岸では、大量発生するユスリカの一種を集めて、ハンバーグのようにかためて鉄板の上で焼いて食べる習慣があります。
また、ユスリカの幼虫である赤虫は、水底泥の有機物を多量に食べて成虫になり、水域外へ出るため、水中有機物を持ち出すことになり、水域の浄化者として水質浄化の役割に一役かっています。
水質や土壌の状態を良質に保つためには欠かせない虫であることもまた事実です。
まとめ
このように、ユスリカの幼虫時代はある意味では益虫としての可能性を秘めています。
成虫になると、途端に迷惑行為を働くようになる訳ですが、わずか数日の命だからと諦めて放任するか、害があるからと退治するか…判断に迷うところです。
その集団から逃れようと振り払っても、しつこく追いかけてくることもある蚊柱。
ユスリカが血を吸わないと知っていても、人間に役立つ一面があったとしても、大量発生すればやはり迷惑な存在です。
光に寄ってくる習性があるため、遮光カーテンを使うなど工夫するのも1つの手段です。
とりあえず、お困りの際はご相談くださいね。
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